1.背景と課題
なぜ今「セルフマネジメント」か― 国民皆保険から65年の転換点
出典:人口動態統計・人口推計(2025年)、日本医師会「令和7年病院の緊急経営調査」(2025年)、Nakayama et al.(2015)ほか。詳細は報告書本文の引用文献参照。
現状と課題
1国民意識の変化
約5割は給付維持・負担増を容認(2022年調査)する一方、2025年参院選で保険料軽減を訴える政党が伸長。国民は「カタストロフィック型」保険を指向していると考えられる。
2給付範囲縮小の始動と政府の予防医療シフト
2026年健保法改正でOTC類似薬一部保険外化等の給付縮小が始動。他方、政府は「攻めの予防医療」を骨太2026・日本成長戦略に明記。
3ヘルスリテラシーの低さ
かかりつけ医不足、信頼できる情報の欠如。QI(Quality Indicator)は全国共通9指標のみ。SDM・DA整備も遅延。
4既存施策の限界
医療費適正化計画・データヘルス計画・健康日本21では、健康づくりを推進する国民への直接的メリットがなく、行動変容に至らず。
5自己管理の経験と技術進歩
コロナ禍でOTC検査薬等による自己管理を国民が経験。他方、SaMD等の技術進歩に診療報酬の評価速度が追いつかず、既存の医療保険制度での評価は限界。
提言に当たっての4つの前提
- 健康格差・所得格差を放置せず、社会的弱者を切り捨てない
- 医療保険制度の中核を守り、持続可能性を追求する
- 医療機関(病院・診療所)の経営改善にも寄与する
- 時代の変化に応じて制度を変える必要性を示す
方向性:受け身→ 主体的/治療→ 予防
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2.提言1
「セルフマネジメント」を推進する環境の整備
基本的方向性:「受け身」から「主体的・参加型」へ
- 国民・患者
- 「受診する人」→「健康づくりの主体的担い手」
- 医療者と患者
- 共に治療・予防の意思決定を行う体制へ
- 受療の起点
- 発症後の受療→ 健康教育による主体的な健康づくり
1SDM(協働意思決定)の推進とDA(デシジョンエイド)の整備
- 報酬評価を拡充(現行は腎代替療法指導管理料のみ)。要件はIPDAS基準を勘案
- Mindsの枠組みにDA開発・公開を組み込み財政支援
- 参考:患者主体の医療研究会(2021年)の検討案
- 入院1,000点(7日間)/外来7,000点(一連1回)
- 対象:一般病床400床以上・紹介患者対応を主とする医療機関(538・6.4%)、がん・難病
- 施設基準に医師派遣・A水準等の政策要件
- 医療機関にも経済的メリットを付与
2医療従事者の役割変革と国民への健康教育
- SDMの報酬評価拡充と併せ、DA使用・研修履行を要件化
- 初等中等教育からの健康教育を制度化
- 身近な健康相談拠点として「かかりつけ医」機能を強化
3体外診断薬のOTC化等の環境整備
- OTC薬適用疾患の検査薬は速やかにOTC化(コンパニオン診断薬と同じ発想)
- 自己採血・検体郵送・針処理など関連法規制を整備
4社会的基盤の整備とAI技術の活用
- 「セルフマネジメント拠点(仮称)」を基礎自治体・事業者単位で整備(医療機関・薬局・有資格者施設・当事者団体)
- 国の情報サイト整備と民間サイトの国認証
- 生成AIによる健康相談・検査結果解釈の社会実装に向けた法整備
出典:加算の点数・要件・施設基準(参考案)および病院数構成比=「患者の望みを支える『患者主体の医療』実現のための研究会」報告書(2021年)、日本語版IPDASi(v4.0)、薬事審議会医療機器・体外診断薬部会とりまとめ(2025年3月)。
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3.提言2と全体像
保険給付範囲の縮小に備える― 「セルフマネジメント」支援への制度再構築
1セルフマネジメント給付(仮称)の創設と重症化予防に関する保険外併用療養費の拡充
- 疾病治療を前提とした制度から「セルフマネジメント」支援へ再構築― 予防を「未来への投資」と位置づけ
- 保険給付範囲を抜本的に見直し、疾病予防に対する給付を創設
- 医療用アプリ・ウェアラブル・生成AIによる自己管理支援インフラを整備
- 療養の給付と新給付の間に位置する重症化予防は選定療養の拡充で柔軟に評価
2個人の健康づくりの体系的評価と民間保険等によるセーフティーネット
- 英国NHS等で実績のあるPAM(Patient Activation Measure)スコアを段階的に導入(CKD等SDM先行領域・先進保険者のモデル事業から)
- レベル1・2:専門職の伴走型支援/レベル3・4:インセンティブ付与
- 自己負担増への備えとして、税制優遇付き日本版「自己管理型医療貯蓄口座(仮称)」を民間保険会社等に導入
- 健康づくり評価と連動し、口座拠出への保険者補助など「実感できる」インセンティブへ
全体像
提言1推進環境の整備
SDM/DA・健康教育・かかりつけ医・OTC検査薬・拠点・情報サイト・生成AI
提言2給付縮小への備え
セルフマネジメント給付(仮称)・選定療養拡充・PAMスコア・医療貯蓄口座(仮称)
目指す姿セーフティーネット機能の維持× 現役世代の保険料負担軽減
受け身→主体的、治療→予防への構造転換。格差配慮を大前提に「まずはやってみる」
実現に向けて:政府における制度的検討に加え、保険者・医療関係者・産業界・国民の参画のもと、時間をかけることなく検討に着手することを求める。
出典:Hibbard et al.(2005)、報告書図表13(米国HSAの概要)、財政制度等審議会財政制度分科会(2026年4月)ほか。詳細は報告書本文の引用文献参照。
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